せんくつにっき

思うこと、感想、とかとか

僕の心のヤバいやつ感想『僕は許しを乞う』

・なるほどこれは「マジメ」とかじゃないね。「誠実」だ。

mangacross.jp

・前回の感想で、私は市川のラストの行動について「マジメ」だの「肩肘張ってない?」だの書いたんだけど、あれはあの電話時点で市川が「山田とお付き合いするにあたって、山田の両親に対して何かを表明しなくちゃいけない→なにかを表明しなければ、山田とキチンとお付き合いしてることにならない」と考えていて、そのうえでの行動なのかと捉えたからなんだけども、今回の冒頭でそうじゃないことが示された。市川自身も「僕はなにを……」つってるわけだし、なにか考えがあったわけじゃないのは明白だ。そのうえで、いざ山田の両親を前にして口に出るのが、お付き合い"することになった"という報告と、そして大切に"したい"という表明なのだ。全方位に誠実。

 

・サブタイこそ「許しを乞う」だけども、その許しとは山田と付き合うことに対してではないってのが本当にいい。山田の好きなスープのレシピを教えてもらいたいというのは、市川自身が言っている通り、山田の「大切」を自分も「大切」にしたいということなんだけど、山田パパ"だけ"が山田に与えることのできた幸せを、自分(市川京太郎)も与えられるようにしたいということでもある。許しとは、それに対してだろう。この先、他の誰よりも親密な人間関係を続けていき、否応なく互いが互いの色に染められていく先で、元々の山田の色も大切にしたいというわがままのためだけに、スープのレシピを教えてほしいと。それにしても、相も変わらずアドリブが強いな市川は。

 

・ところで、今回一番好きなシーンは市川の『"絶対傷つけない"、"泣かせたりしない"、そんなこと約束できるのか?』って葛藤のとこなんだけど、これは私が「合理を無視するほどの誠実さ」が大大大好きだからだ。なんというか、こう、言っときゃいいじゃないですか。普通は。「絶対傷つけない」も「泣かせたりしない」も、「一生幸せにする」とかも。それらは決意を示すためのある種の定型句で、それを口に出さないことの方が不誠実だと捉えられるものだけど、誠実が過ぎると、大事な人に決意を示す(あるいは不誠実さを見せない)という合理性よりも、確約できないことは口に出さないという誠実さが優先されるのだ。もちろん、それらの言葉を口に出すことが誠実じゃないってことではない。絶対にそうするという気持ちと、それが出来る自分を心の底から信じているなら、それは誠実で間違いない。だけど市川は中学生で、まだまだの真っ只中にいる。信じ切れるわけがないのだ。

 

・ワンセンテンスがいちいち長くなっちった。相も変わらず時間はないので頭っから行きましょう。個人の感想です。

 

・『いきなり親……!?』まったくもってその通り。中学生の行動じゃない。みんなびっくりしてんじゃんか。山田パパとママも顔見合わせてますよ。仲良しでおかわいいね。というか市川自身も「重いのでは?」ってなってるし。お前が狼狽してんじゃないよ。川尻こだまみたいな画風になりやがって。

 

・翌日。山田がスンってなってるときは、たいがい見た目通りの感情じゃない。みんな知ってるね。先に帰ったのはおめかしのためのようで、それ自体は和みまくるんだけど(髪まで巻いちゃってまあ)、結果としてカッチリした料理と合わさって市川を追い詰められてるのは……まあ、市川の自業自得でええか。『え~~~~なに~~~~?』じゃないよ。お前が始めた物語だろ。

 

・はしゃいでるママと、露骨に身構えてるパパ。こう、ザ・娘の彼氏が挨拶に来た家庭の風景って感じで、そう考えるとここまで来たかって感慨がまた湧いてくる。いや早いんだけどね。付き合い初めてまだ3話目とかですよ。ところで、この料理は明らかに山田パパが作ってるわけだけど、どういう経緯があったんすかね。自分から作るっつったのか、山田か山田ママにねだられたのか。どっちもありそう(ねだられて断れるパパじゃないでしょ)だけど、前者だったら込められた「圧」がやばそう。

 

・オニオングラタンスープ。絶対食べちゃダメなのに匂いに反応してるわん太郎かわいい。駄犬がよ。

 

・市川の言葉については冒頭でいっぱい書いちゃったので、山田パパの返答について。大人らしい返答ですね。「僕たちも親として未熟だ」という言葉はまず、どうしたって「絶対傷つけない」みたいなことが言えない市川に対し、その「言わない」という誠実さを汲み取ったうえで、それを言えないのは市川の不足ゆえではなく、自分たちもまだ言えないのだから、そもそもこの場にはまだ早すぎるという諭しだろう。

 

・「つまりどういうこと??」。山田ママがバヤシコみたいなこと言ってる。過去イチかわいいなここの表情。いいんだよ、交際の報告と共になんかいい感じのこと言いながらレシピを求めたら、なんかいい感じのこと言いながらレシピを渡して「楽しみにしてる」っつったんだから、なんかよくわかんないけどいい感じに収まったって理解でさ!

 

・「はっきり言う!」。母は強いね。まどろっこしい言い方するのは……こう、男の人だからというか、いやそれもあるかもしれないけど、どっちかっていうと2人がそういう人間だからじゃないでしょうか。あとまあ、やっぱりはっきりとは言いたくなかった父親の往生際の悪さ。この頬突っつかれてるとこでやっと市川パパの怖くない顔が見れましたね。

 

・「大好き!」。父親だけを殺す呪文だ。「あーんママは?」って山田ママはなんぼなんでも娘の彼氏の前で緩み過ぎではないでしょうか。

 

・「やっぱりだめ」。草。ここもなんかすごい好きなんですよね。山田ママもそうなってるけど、冗談や軽口を叩いたり、油断した姿を見せることで、市川も山田家にとっての「身内」になれたというか。なんならここの「ダメ」で本当に「許し」を得られたなって思った。

 

・はいじゃあここまで。もうちょっとパパの返事のあたりはごちゃごちゃ書くつもりだったけど、途中でデータが半分ぐらい消し飛んだので、結構短くなってしまった。まあいいでしょう、まどろっこしく書くのはまた時間がある回で。次回はいつも通りの二週間後で、さらにそっから数日すればアニメ開始だ。年度末に向けてアホほど忙しいけど、それらを心の支えにして頑張っていきましょう。じゃあ、そんな感じで。