せんくつにっき

思うこと、感想、とかとか

僕の心のヤバイやつ感想『山田は僕が好き』

・サブタイトルみた瞬間に声出たよ。で、読み終わってあまりの青春さに胸が苦しくなってた。そうか、そうだな、あの時も保健室だったな。

mangacross.jp

・「好き」未満から始まって、片想いを経由して、長く続いた両片想いもとうとう終わりを迎えて。まさかこっから正式にお付き合いを始めるまでまた何巻も費やすとは思えないし、今回もまた一区切りだけど、またすぐ大きな一区切りが来るんだろう。その先が作品としてどうなるかはわかんないけど、もう今の時点で、この作品を好きになれてよかったと言える。

 

・断られるのなんかわかってて、それでも踏ん切りのために告白する。まさしく儀式だ。第二ボタンはこのために自分で取っといたのね。こう、総じて中学生らしく青臭くて小賢しいけども、私はこういうの大好き。あと軽薄な男がその実まじめに恋をしてるってのも好き。今回で私的好感度は相当上がりましたよ。こう、薄々「そうだろうな」とは思ってたけど、ちゃんと示してくれると安心できる。呼びやすいので引き続きナンパイと呼ぶけどな。つって、そもそもこの先ガッツリ再登場することあんのかな。2人が付き合った後も作品が続いて、なんらかのことで2人の心がちぐはぐになったりしたときにでも、またひょこっと表れて市川を叱咤するみたいな、そんなベッタベタな役割でもいいから出てほしいっすね。いやだ! ふたりはずっと円満なんだ!(錯乱)

 

・書きたいことがシーンごとにばらけてるので、とりあえず頭っから行きましょう。個人の感想です。

 

・前回から場面は変わらず、保健室にナンパイ登場からスタート。ホントに送辞が響いてたとしても、この男はこういう言い方しかできないんでしょうねたぶん。別に悪いこととは思いませんが。これを空虚と捉えるのも、市川くらいひねてたりナンパイのことを好ましく思ってないからこそだと思うから、強いて言うなら相性が悪い。この軽薄さ、軽薄を自分に課すやり方が、市川とも、そしてたぶん山田とも。

 

・一転、改めて山田に声をかける直前のこの長い三点リーダーよ。中学を卒業したての男子の、等身大の緊張が見て取れる。あとの描写を見ても、真剣さの自己演出ではたぶんない。で、この「やっぱここでいいや!」よなやはり。すごないすか。「後」のこと考えてるんですよ。山田と市川が2人きりで保健室にいるの見て、改めてその親しさを確認して、勝ち目なんてなく、今から自分はわざわざ振られようとしてるなんてことはわかってて、それでもこの若さだから「もしかして」は捨てきれてないはずなのに、これから自分を振る相手と、その相手が好きな人のために、自分の玉砕をある種踏み台にしてもらおうとしてんですよ。どんな胸中やねん。

 

・失礼、謎の関西弁が出ました。ある意味強がりではあるのかもしれないけどね。「振られるのわかってるのに」ではなく、「振られるのわかってるからこそ」、儀式だの後輩の手助けだの、そういう風にカッコつけてないと、今から告白なんてできないという。そう考えるとこのヤな座り方も、自分を鼓舞してるように見えなくもない。なんかかわいく見えてきたなこのナンパイ。

 

・ちょっと場面戻して、ストラップ(秋田けんたろう)の受け渡し。ナンパイに呼び出され、返事からもわかる通り山田は全然乗り気ではない。振られるのは当然しんどいが、振る方だってしんどいはしんどいのだ。それを察して「お守り」を渡す(返す)市川、お守りの意図は疑いようもなく「大丈夫」ということだろう。なんだこのスパダリ。見せつけやがってよ。このやり取りがナンパイにとどめを刺したのではという意見も出るかとは思うが、あんまり好きじゃないっすねそれは。解釈っつうか言い方が。告白の場所を保健室にしているのはこのやり取りを見たあとなので、否定はできないんだけども、ハナっから覚悟はしてきているというのが個人的解釈です。「後」を考えて気を回そうと思ったきっかけにはなったかもだけど。

 

・暴力を辞さないのはちょっと過激だけど、「あの日の僕じゃない」ってのはすごくいい……っつうか好きな言葉だ。自分自身のポジティブな成長を自覚しているって、特に市川においてはそれそのものが成長でしょう。

 

・南条と山田。山田にとって、ナンパイはあまり好きじゃない相手だろう。「好きじゃない」だと言い方が強いかもしれないから、「得意じゃない」でも「苦手」でもいいんだけど、なんにせよそういう好感度が平均を下回ってる相手でも、それはそれとして「サッカー続けるのかな」みたいな些細な興味を持てているというのは、わからない人にはわからないタイプの「いい子」だと思う。この場合、「わかる」のは興味を持てない側の人間である。

 

・ナンパイも、山田からはさほど良い印象を持たれてないことは分かってたと思う。もちろん、山田と同様その内心をモノローグで示されていないので、間違いなくそうだとは言えないけども。好意を持たれてないのにぐいぐい行っていたの、って疑問はもうそういう文化だからとしか言いようがない。過程は多少強引だろうと、その結果好きになってもらいたかったし、そのための努力だ。ただ実らなかっただけで。それで言ったら山田だって想いを自覚してからはそれなりに強引だった。ちょっと話は逸れたけど、「なんとも思われてない」と思ってた相手(山田)から思いがけず自分の「好き」を指摘されるの、相当に嬉しかったろうなってのが言いたかったことです。また軽薄で返してるけど、本心が隠しきれてない。なんだその笑顔。今更萌えキャラになるつもりか?

 

・回想の、練習を見てるナンパイの表情、後半で明かされる怪我のことを考えたら味わい深いもんがありますね。バレンタインのお返しを話してたときも、あれは練習を見ていたんだっけか。ナンパイにはナンパイの物語があったのだ。

 

・ま、間宮先輩! お久しぶりです! 大晦日ぶりですかね?! ナンパイ捕まえといてよっつったけど、好きな男の恋路とそのけじめに口は出せなかったか。「バカみたい(でも好き)」だろこれ。

 

・山田が頑張ってると嬉しいとか、尊敬してるとか、えらく無邪気な顔で言ってくれちゃってまぁ。嬉しさを引きずって本心が引き続き隠せてませんよ。無理やり連絡先を聞くとか、バヤシコをダシにするとかじゃなく、最初からこういう風に山田に接していたらまた違った未来があったかも……なんてのはカミサマ視点が過ぎるけども、でもやっぱりこういう人のほうを応援したいし、現に山田にはこの言葉が響いて、涙まで引き出しているのだ。

 

・ナンパイ、一世一代の告白。こんな大ゴマもらったの初めてじゃないかな。そんな茶化しはおいといて、けじめのつもりだろうと、いや、だからこそ、よく頑張ったと言いたいっすね。あと第二ボタンの風習ってまだ残ってんですかね。記憶からすらなくなっても良さそうなレベルで古臭いと思ってるのだけど、まあ全国的なもんだからそうそう消え去りはしないか。

 

・「わかります‼」の時点ですでに涙目の山田。好きになる理由やきっかけ、好きな人への接し方はそれぞれだけど、誰かを心から好きになったときの感情は、ナンパイも山田も市川も同じで、それがわかったから山田も流し、誠意を持ってお断りしたんだろう。少し前に体育倉庫で聞いたときと同じように。実は、もうさほど気にしてはいないけど、いつかの図書室での「恋人のふりをしてナンパイを遠ざける」あの行為のことが小さなささくれのように残っていたので、今回山田がこうして「ちゃんと」振ったことにも満足している。

 

・「好きな人がいるんです」のとこの眼の書き込み、すごいな。気合が入りまくってる。これ以上なく綺麗な涙を描いてやるという気合だ。

 

・で、ついに。『山田は僕が好きなんだ』。『僕は山田が好きなんだ』のときも保健室で、あのときはベットの下だったが、いやぁついにだ。あの時の自分と同じ涙を見て、ついに市川がその確信を得た。最高ですね。ずっと読んでて本当に良かった。総括にはやっぱりまだ早いけど、言わずにはいられない。好きになれてよかった。

 

・好きな人へ言葉を送り、答えを貰い、そして貰った言葉を後輩への送る言葉にもして、ナンパイの式は終わり。「俺の式は終わり」なんてわざわざ口に出すとこに強がりとカッコつけを感じなくもないけど、そんなもんだし、それでいい。傷心なのだ、本心を出すのはいいけど、傷を見せる必要はない。

 

・「2人っきりにッ」、ウけますね。告白のときなみに汗流してんじゃねえかナンパイ。さもありなん、玉砕しつつもその後二人が告白が出来るようにと渾身のアシストを、当の本人はこれをスルーだもの。なぜゴールしない!! なんだかんだ市川はしょっちゅうナンパイを焦らせている気がする。

 

・市川は両想いを確信して、山田は好意がバレたことに気づいて、二人の反応が非常に可愛い。この山田の顔もいいですね~。あんまり率先して当て馬になった人間にこういうこと言いたくないけど、ナンパイはよくやってくれましたよ。

 

・ナンパイが保健室を出て、2人っきりになった保健室、当然ヤッてはいないだろうけど、なんかしらやり取りはしててくれないかしら。

 

・決着は……図書室かなぁ~~。最近はめっきりご無沙汰だけど、やっぱり二人の特別な場所って言えばまずは図書室だもの。好き未満から両片想いまで、その間ずっと過ごした空間なのだ。

 

・とりあえずここまで。