せんくつにっき

思うこと、感想、とかとか

僕の心のヤバイやつ感想『僕は板挟み』

・えらい不穏なサブタイだな・・・・・・と思って読み進めたら、なんか思ったよりシリアスな展開になっちゃってた。た、楽しい合宿は?! 楽しい合宿はどこに消えたの?!

mangacross.jp

・喧嘩発生。ヤですねーーーーーーー。創作現実関係なく、あらゆる人間が争いあうことのない世であってほしいと願う人間なので。嫌いな言葉は上から順に、奪う、争う、戦う、です。冗談はさておき、山田と萌子が喧嘩するとは。この展開は全然予想してなかった。萌子の怒りのトリガーになったのは、まあ明確に「女子として尊敬する」発言なんだけど、これが逆鱗ってことは、つまりそういうことですよね。こう、山田が萌子に市川関連で一方的に嫉妬心やらを抱くのはよく描かれてたけど、萌子が山田にそういう感情を抱いてる描写ってなんかあったっけ? 全然覚えてないけど、私も大概読み込みが浅いので、普通に見落としてる可能性はある。というか、クラスメイトは基本ガキ扱い(≒大人ぶる)で、山田に対しても保護者ムーブしてる印象しかなかったので、よっぽど今回の山田の言葉(前後の態度も含め)が腹に据えかねたと見える。というかそうか、嫉妬だとかを保護者ムーブで誤魔化してたって読むのがストレートか。

・9巻範囲でチラッと話が出た「萌子は山田を連れてのナンパ待ち徘徊をしなくなった」ってやつが、逆算的ではあるけど「そういう描写」だったのかなと、今更ながら思ったりしてる。今回の喧嘩を読んで真っ先に思い出したのがそこなんですよね。嫌で過剰な言い方だけど、「自分の惨めさに気づいた」というか。

・もちろん、今回の山田への怒りが劣等感だけを源泉にしたものではないとは思ってて、言い争いの最中に出た言葉の通り、雑な態度だとか合宿に臨む態度とか、そもそも受験を前にして多少ナーバスになってるってのもあったのだろうけど、しかし引き金になった以上劣等感のようなものがあるのも確かで。

・こういうとき、つまり自分より優れてると認識している相手の行動・態度に反感を抱くとき、その内のどこまでが正当な(つまり、相手方に明確に非があり、反感を抱くに値する)ものなのか、それとも嫉妬や逆恨みの類いが含まれているのか、正当なものだったとしても自らの負の感情の大きさはその理由に見合うものなのか、僻み嫉みや惨めさに対する苛立ちが含まれていないのか、自分でも判断つかないんですよね。そして、その判断がつかないという事実が、それを自認できる人にとってはもの凄くストレスになって、だけどそのストレス自体は今度こそ100%自分のせいで生まれたものだから、それを想ってまた嫌な気分になる。この連鎖のうち、萌子の苛立ちがどこまで至ってるなのかはわかんないけど、自分の怒りの正当性がグラついてるときって怒りを表出してもしんどいだけなんですよね。だから、いろいろ山田に言葉をぶつけたけど、たぶん全然スッキリ出来てないと思う。

・あんまり冒頭を長く書いてもしゃあないんだけど、一個だけ。今回の好きなポイントなんだけど、言い争いに発展する直前の萌子の「~はやめてよって”話”」の部分がめちゃくちゃ”っぽく”って最高。煮える腹を抑えながら冷静かつ理性的論理的な態度・言動で『あろう』とする人間はこういう話し方をして、まずその質感が最高だし、まして基本的にいつもひょうひょうとおちゃらけた萌子が『冷静かつ理性的論理的であろうと』するくらい頭にキテたってのがまた別の角度で最高。要するに、言い争いのとこを何度も読み返しちゃうって話です。趣味わる!

・そんじゃあ、頭っからいきましょうか。個人の感想です。

・二日目の朝。山田!腹! 腹っつうか下乳見えとる! というかあれ? いつもはナイトブラとか着けてませんでしたっけ? そんでそのままの恰好で朝飯に出とるが、や、山田?? 彼氏とはいえ男子もおるんだが、山田?? 正気??

・市川は市川でマジで外で寝らされとるよ。「過酷だ」で済むレベルじゃないというか、外にしたって日陰に入らなきゃコトでしょう。なんか合宿始まってからずーっと心配してるが、まだまだ心配するぞ私は。

・好感度UPのための朝食づくり。作りすぎるわ散らかしっぱなしだわ、ホントにパパじゃん。まあ、パパというか男か。たまの料理ではしゃぐし後のことを考えてないってのは。そういう言い方をすれば、男を見せたと言えなくもない。見せる意味のない男だけども。

・萌子のマジレス。「そういう眼」で見ればこの時点からすでに若干イラつきを表に出してるようにも読めるけど、穿ちすぎだろうか。というか、ちゃんと3日分メニュー計算できんの凄いね。中学生なのに。

・バヤシコがまぁたいらんこと言うとる。はよ付き合ってること教えてやれ、無意識に地雷踏むことは無くなるぞ……と思ったが、たぶん伝えたが最後、ポロっとバスケ部とかで漏らしちゃってあっという間に学校中に広まっちゃうんだろうな。というか、この程度の軽口が地雷になる山田も山田、って見方もあるんですよね。もうちょっと大人になろう! 一足飛びには難しいけど!

・回想。はしゃぐ……というかイチャイチャしてる2人。「触るな」「触る」とか、マジで何の意味も伏線もなくただただイチャついてるだけのコマじゃないか。勉強合宿だからな一応。夜の遊ぶ時間だからいいけど、勉強する時間にこのテンションを持ち込むのは良くない。市川の嫌な予感は的中してしまった。

・オニオングラタンスープ。なぜ山田が最初に気づかない…?と思ったけど、和×2の洋×3作って山田は和を選んだ感じですね。それはそれで視野の狭さが心配になるけど、なんかそれは作劇の都合っぽいので置いときたい。市川はあれから何回か練習したんですかね。他の料理も作りながら、初めての、それもこんな手の込んだ料理はなかなか難しいですよ。

・まだまだ。完全に2人の空気入ってますね。「あんまりイチャつくなよ?」って諌言は届いてませんでしたね。オニオングラタンスープが明らかになんらかの特別な品ってのが傍目から見てもわかっちゃうだけに、市川にはそれならそうと山田に言って最初から洋食選ばせろだし、山田には奪うんじゃなくて自分で気づいて取っとけよって、そんな萌子の心の声が聞こえるようだ。今回は特にだけど、結構前の回から萌子の瞳のハイライトが消えてることが多い。

・勉強タイム。やっと合宿の本来の目的にたどり着きましたね。心なしか萌子も嬉しそうだが、そこに現れる山田。後の展開を知ってから読むと、「……まー本当は」の返しがすでにちょっと冷たい。言外の「今日はマジメにやりたいんだけど」もそうだけど、特に「……」が怖いよ「……」が。この流れで読むと、受験前のナーバスになってるとこに、勉強に集中できないあれこれを差し込まれ、とどめにコンプレックス刺激で爆発って流れっぽいですね。

・「負担? なにが?」。ひいぃっ。思わず謝ってしまいそうなくらい怖い。この時点でヤバイ空気は山田も察してて、「だからせめて」もフォローのつもりなのだろうけど、しかし言葉が悪く、バヤシコなんか眼じゃないくらいドデカイ地雷を踏んでしまった山田。山田は凄いことを凄いと素直に尊敬できるし、凄いと言ってもらったら素直に喜べる側の人間なので、これがフォローになると思ったでしょうね。

・「ね~~~~」、ペンを置いてる!! 怖い!! 一瞬の沈黙の後のその動作を想像するだけで怖すぎる!! 「思ってないこと~」はもう、だいぶプッツン来てますね。尊敬するとは言いつつ改善を見せないって視点から見れば的を射てないわけではないのだろうけど、いつもの保護者ムーブなら言うにしてももっとうまい言い換えがあったはずで、上でも書いたけどそっち方向に取り繕うつもりもないってのがゾクゾク来ますね。

・「別にいいんだよ杏奈は出来なくて」「だって可愛いし」。キッッッッッッつい!!!!!!!心の臓がえぐられそうだよ。この言葉から漏れ出る萌子の内心と、それを言われた山田の内心を思うだけで。「私は可愛いから家事なんて出来なくていい」なんて山田が思ってるはずはないのに、山田がそう思ってるなんて萌子も思ってるはずないのに。だけど、可愛いから許され、受け入れられ、構われる環境に山田がいることは、少なくとも萌子よりは「そう」であるのは間違いない。それを萌子は分かってると。

・「なんでそんなこと言うの?!」。はい板挟み開始。こういう時男はなんにもできない。もうちょっと前の、「負担? なにが?」の辺りで手を打つべきでしたね。もちろん下手な手を打つとそれはそれでこじれてしまうのだけど。そんで「多分他の人もそうだよ」は良くないですね。攻撃する気しかない言葉。

・話が全然別方向に流れていく。もうこうなったら終いです。泥沼泥沼。朝ごはんだのカレーの感想だので市川がやり玉に挙げられたけども、どこまでいっても「それを言うなら」の世界、つまりいつもであれば別にさほどでもないことを感情に任せてぶつけてるだけなので、マジで巻き込まれ損。カレーの感想言われてないの根に持ってたのね。

・「京太郎の言葉は軽くないのっ」。さっきから「京太郎」呼びになってますよー。そんで言葉のチョイス!! 悪すぎ!! 確かに滅多に誉め言葉を言わないけど、それはどちらかと言えば改善すべき点なので……。

・泣いちゃった!! 同性から反感を買うタイミングの涙。とはいえ胸は苦しくなりますね。合宿が決まった保健室を思い出す。下手に市川が志望校を誤魔化すムーブを取った(そのうえ、萌子にははっきり言った)せいで、受験に関しては山田は自分が蚊帳の外に置かれたと感じてしまったし、そしてそれは部分的には合ってしまってる。おそらく、この合宿では勉強に集中したい萌子の感覚とも。「2人でやってればいいじゃん」は、たぶん熱くなった頭では「そうだよ、だから邪魔しないでよ」になってしまう。

・ふと思ったけど、萌子は家族の協力は得られてるんでしょうかね。言ってないってことは流石にない気もするが。合宿に入る前、市川は受験疲れでノイローゼになりかけてたところを家族と山田にサポートしてもらってたけど、萌子にそういうイベントが起こったのかが気になるところ。初めての受験なわけで、失敗の苦い記憶はないが未知への不安は存在する。

・修羅場を眼にしたバヤシコ、にゃあ、そしておねえ。こういう物語の渦中に小林が入ってくるの珍しいね。とりあえずバヤシコは山田に、芹那は萌子に、おねえは市川にそれぞれ話を聞くのが人選的にはちょうどな気もするが、さて。

・次回のチラ見せは、萌子のちょっと苦い過去。過去(日常)ってのがちょっと重い気持ちになりますね。日常的にほんのちょびっとずつ、「大丈夫だから」って理由で放っておかれる感覚。信頼かもしれないし、蔑ろかもしれない。それは受ける側の気持ち次第で、容易に反転しうる。

・おねえがコミカルに落としてくれなかったら後味がもっと悪くなるところでしたね。萌子の機嫌が悪かったり勉強中に山田が絡みに来たりが全部ゴムに起因するものがったら、いよいよ真犯人はしばかなきゃいけない。ただ、萌子の山田に対する気持ちも山田の受験に関する疎外感もゴムが無くてもそこにはあったものではあるので、そこは忘れないようにしましょう。じゃあ、そんな感じで。