せんくつにっき

思うこと、感想、とかとか

僕の心のヤバいやつ感想「微熱」

開設して1番最初の更新がバズ漫画の感想ってどうなのよ。いや、これがしたくて始めたんだけど。

 

 

イイ。

なんかこう、いい。いや、良さの理由は何となく分かってるけど、言葉に出して陳腐になるのがよくない。

湿度は『今日こそは言うぞ』未満『押相撲』以上って感じ?この辺もそのうち感想を投稿したい。

双方向性がある分、『移動教室』よりも好き。

 

双方向性。それもちゃんとラリーしてる。

 

一番最初は山田→市川。言わずもがな。『体調が悪くて保健室に行った市川』を慮って、給食を持ってきてあげてる。気遣いのできる女、山田杏奈である。ここで少し行間を読んでみよう。

山田は市川が保健室にいることを知っていた。市川は『保健教諭に体調を伝え』、『体温計で熱を測る』程度の、決して長くない時間しか保健室に滞在してないが、山田はその間に市川が保健室にいることを確信したからこそ、給食を持ってきていた。

確信。どうやって?二通りほど考えられる。

市川に聞いたか、担任に聞いたか。クラスメイトの誰かに聞いたというのは多分無い、と思う。理由は後ほど。

 

市川に聞いた場合。時系列を考えると、4時間目中ずっと体調が悪かった市川は、給食の時間になって直ぐ、あるいは少ししてから教室を出た。そこを山田が目ざとく見つけ、「どうしたの?」「い、いや、熱っぽくて……」「そうなの?!」的な会話。妄想ながら、いい。山田お前なにずっと市川の動向気にしてんだ。

 

担任に聞いた場合。保健室に行くとなると、当然給食の時間中いないことになる。高校〜大学〜社会人と経験すると忘れそうになるが、義務教育では昼休み≠お昼ご飯タイムである。給食の時間も立派な学習の時間である故、席を立つことは担任に伝える必要がある。あのクラスの担任って誰だろう。体育教師か?あの人生徒指導にも見えるが。

ともかく、給食の時間になって直ぐ、担任に保健室に行く旨を伝える市川。このルートだと山田はその行動に気づかないか、気にしない。少しして、はて、市川がどこにもいない。先生に聞いてみよう。……なるか?なるんだよ!クラスメイトには内緒にしたいけど、先生なら別にいいだろう。

 

クラスメイトに聞いた説はないと前述したけど、そのルートもおもしろい気がしたので妄s……行間を読もう。

最初このルートがないと思っていたのは、市川が聞かれもしないのに保健室に行くことを誰かに伝えるとは思えないし、さらに市川に聞くのも山田以外考えられないから。つまり、クラスメイトは市川が保健室に行っていることを知りようがないから。さらに、市川がどこに行ったかを、山田はクラスメイトには聞かないだろうから。(内緒の方が楽しいと思うな)

けれどもどうだろう、市川が担任に伝えているのが誰かの耳に入れば、それがヤンキーさん、ビッチさん、彼氏さん、その誰かだったら。

保健室に行く市川、気づかない山田。少しして、市川がいないなとキョロキョロしだす山田。誰かを捜している様子。多分そこで「どうしたの?」と聞いても山田は誤魔化すから、確認もせずに「市川なら保健室に行ってたよ」……。そう、『お友達にはバレバレルート』である。いい。言われた山田の反応を考えるだけでゾクゾクする。するなぁおい!

 

大きい声出してすいません。

 

どうでもいいけど、僕ヤバの感想を見ていると、色んなところで『彼氏さんだけは2人の関係に気づかない』的な文脈を見かける。ナンパイセンにダシにされかけた件を見てのことだろうし、そう間違ってはないと思うけど、個人的にはあれは『自分の事だから』防御できなかっただけで、=恋愛の機微に疎い、とは決めつけたくない。それに、一番の親友(だろう)の山田の様子がおかしいのに気づかない訳はないと、こちらもまあ、あくまで、思いたくない、に留まるが。

 

 

話を戻そう。行間の話?いや、ラリーの話。

『自分のために給食を持ってきてくれた』行為、好意に対して、市川は『無下にしないため、早退を取り消して給食を食べる』で打ち返した。それも、山田は市川が早退するつもりだったと知っていて、更に市川は知られてることを知っている状態で。これはエライことですヨ……。鞄の話?まあ待って。

最後のコマは、2人が対面で給食を食べているカット。すばらしい。ずっと続け。週3でやれ。あの青春濃度の高い空間でひとり「やれやれ」みたいな顔してる先生はたぶん恋愛強者。なに市川の方見てんだ山田。いつもみたいにガツガツ食ってみろ。なに?胸がいっぱいか?俺もだよ……!

 

あれ?いつの間にか山田も給食持ってきてるじゃん。……行間を読もう!

 

多分山田は一旦教室に戻り、自分の給食を持ってきた。Twitterの感想で、『市川に給食を届けた山田が戻ってきたかと思えば、自分の給食を持ってまた保健室に行く、その一部始終を見ていた教室の空気』に思いを馳せている人がいて、思わず膝を打った。天才かよ。

じゃあこっちは、『山田が自分の給食を持っていく(来る)に至った経緯』について考えてみる。

 

最初、市川の給食を持ってきた時点で、山田は一緒にお昼を食べるつもりだった?それはNOだろう。まだ2人は付き合ってない(多分)のだから、それはやり過ぎ。

保健室で給食を食べるのは、体調が悪い生徒だけ。それは山田も重々承知のはず。

ここで効いてくるのが「腹痛?」「ま、まぁ」のやりとり。この「ま、まぁ」がとっさの嘘、誤魔化しの類いであることはその場にいた全員が分かっているだろう。ついでではなく、純粋に自分を慮って給食を持ってきてくれたのが分かったから、市川は早退しないことを選んだし、それを見ていた保健教諭も、この2人に漂う甘酸っぱいものを感じ取ったはずだ。だいたい山田は元気いっぱいなのを隠そうともしない。

 

最初っから一緒にお昼を食べることを山田が計画していた場合、彼女はそれなりの理由を用意していたはずだ。あるいは、「腹痛?」の問いに対し、もっと自信を持ってそうだと言うか。多少デリカシーが無い考えか?これは。ともかく、山田が保健室に来た理由は、純粋に市川に給食を持ってきただけ。それしか考えてなかったという方が、山田のイメージにも合ってる気がする。

 

そうなると、「早退するほど具合悪くないし」の時点で山田のミッションはコンプリート。市川は保健室で給食を食べ、山田は教室に戻ることにしかならない。「一緒に食べよう」という言葉は、多分出ない。付き合ってない2人は、他の人の前では成り行きでしかイチャイチャできない。『今日こそは』の最後のコマとかも、よく見るとまだ空き教室の中だ。

 

打ち返しをもらった山田は、うれしそうにして、おそらく二言三言言葉を交わして、教室に帰ろうとする。それで終わり。本来は。だけど、そこで保健教諭が言うわけだ。

 

「お腹痛いんじゃないの?」

「体調悪いなら、あなたもここで食べたら?」……みたいな。

 

はぁーやれやれしょうがない保健室の先生からもお墨付きもらっちゃったし実際お腹痛いしここで食べるしかないかしょうがないしょうがない席2つしかないし市川と対面になるけどもそれは別に全く問題ない!

 

ともかく。

 

おそらく先生からそういう言葉をもらったから、2人は給食を一緒に食べることができた。ありがとう、名も知れぬ先生よ。MVPだ。気を回してくれたのか天然か知らないけど。

……過去話での保健教諭の言動(「返しといて(ポイ)」「子供みたいに泣くのね」)を鑑みると、デリカシーはないというか、あんまり期待できそうにないけども、個人的には気を回してくれたという説を押したい。そっちの方が優しい世界だから。

 

もう一つのラリー。鞄の話。

まずジャブとして、保健教諭が市川に尋ねる。「クラスで一番仲のいい子は?」その子に鞄を持ってきてもらうためだ。多分それを聞いたら、担任に連絡をし、担任からその仲のいい子に持っていくよう伝えるのだろう。

そこで市川はその問いに答えられずに、自分で持ってこようとする……。

 

この流れのなかで、市川が言葉に詰まっている様子が2コマに渡って描写されている。市川の思考の流れはどうなっていたのか、ここの解釈が一番頭を悩ませた。行間を……行間を読ませてくれ……。

 

一番気になるのは、このとき山田という選択肢が市川の中にあったのか。2人に少しでも仲良くあって欲しいという弱いオタクの願望を抜きにしても、多分あったんだと思う。理由としては、市川が悩んでいるからだ。

 

言葉に詰まっている描写は2コマに渡っている。4ページしかなく、多少詰め込み気味になるTwitter漫画において、2コマは少なくない。なぜそうしたか。時間の経過を表現するためだ。

何を考えていたか?誰に持ってきてもらうかだろうか?それも少しは考えたはずだ。その時に誰も出てこなければ、市川は悩む間もなく自分で持ってくるという結論に至ったはずで、結果的にはそうなっている。

 

だが、それだけを考えていたにしては悩みすぎの気がする。0か1かなのだ。28話時点では、市川は自分に友達がいないことをよく自覚している。この回でも同様の考えなら、即答できるはずだ。

だから、誰か候補は浮かんでいたのだろう。誰?山田に決まってんだろバカヤロウ!

 

仲がいいのは?→山田。じゃあそうと伝えよう……。そうなるだろうか。NO。当然、陰キャはそう単純ではない。

 

次に市川の頭をよぎるのは、山田に迷惑がかからないか、だ。もし先生に山田だと伝えた場合、前述の流れで伝達される。市川→保健教諭→担任→山田。

 

そのうち、担任→山田の時だ。まず間違いなく、担任はこそこそ山田の所に行って小声で「市川に鞄を……」なんてことはしない。当たり前だ。十中八九連絡を受けたその場で山田に声をかける。そうすると、クラスメイトは「えぇっ、あの陰キャと山田が?!」となる。少なくとも市川の頭の中では。

 

同時に、こんなことも考えていたかも知れない。「山田に調子に乗りすぎと思われないだろうか……」当然、山田がそんな人間でないことは市川も分かっているだろうが、好きな人にそう思われると考えるだけで、動けなくなるのではないだろうか。ある意味で自衛とも言える。

 

ちなみに、鞄を持ってきてもらう人は思いつかなかったが、それを言うのを躊躇ったので少し時間がたった、というのも、一応考えることができる。そうあってほしくはないけど。

 

さて、ラリー。

市川のそんな懸念を吹き飛ばすように、山田は市川のために給食を運んできてくれた。『保健室で食べるとおいしい』という、超絶耳より(山田的)情報をひっさげて、その上「市川に」と明言して。気遣いの出来る女、山田杏奈である(2度目)。あるいは、ここまで言わないとまた頓珍漢なことを言われると思ったからかもしれない(「誰か待ってたんだろ?」)

 

これで市川は、自分が山田の中で『山田が自発的に教室から給食を運んできてくれる存在』であることを確認できた。山田が意図していない、山田→市川のボールである。

それを知れたから、市川は二度目の『誰に鞄を持ってきてもらう?(=クラスで一番仲がいい子は?)』の問いに、『山田』と答えた。答えることができた。市川→山田だ。

更にそれに対し、山田は快く持ってこようとした。行動で示す山田→市川。双方満足のパーフェクトコミュニケーションだ。これが……僕ヤバ……。

 

こう書いていると、市川があまり自分から行動していないように見える。まあ実際そうなんだろうし、そういう描き方で陽キャ陰キャの差を表現してるのかなと思う。

ただ、市川は一巻でこれでもかというほど善行を積んでいる。山田にわかりにくい、わかってもらうことを前提としない好意だ。臭い言い方をすれば、無償の愛か。それが、今や『仲がいい子は?→山田』と(赤面しながらも)山田に対して言えるほどになっている。この変化を、祝うべきだろう。

 

感想のとき、画像はあんまり貼りません。面倒なので。