せんくつにっき

思うこと、感想、とかとか

僕の心のヤバイやつ感想『僕らはウソをついた』

・ここ最近で一番好きな回だったかもしれん……。いろんな出汁が取れる。あとなんかこう、言い方むずいけど、昔からの僕ヤバ読者が好みそうな回でもあったな。

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・なにから書こうかな。とりあえず、市川がめちゃくちゃ立派だった。ホントに。まず第一にこの告白が「公衆の面前で」って部分がヤバないですか。断られるためのって部分も当然デカいけど、事情を知ってる人に知らない人、そもそも市川をよく知らない人もいるなかで、さほど躊躇った素振りも見せずにそれをしたってのがすごい。モノローグで語ってる通り、一旦躱すことも可能だと分かったうえでなお、こうするのが一番だと認識して、自分が傷つくことや周りから今後どう思われるか、どう見られるかについては一切逡巡せずに、ですからね。なにからなにまで全部山田のために。夢に向かう山田が好きだから、巡り巡って自分のためでもあるんだって市川は言うかもしれないけど、いやいやいやいや。

 

・そんな市川の意を汲んで、苦しみながらも策を実行した山田ももちろん素晴らしかったですね。市川の判断は確かに立派で、自身を傷つけることで好きな人を守ることができるという見上げた策だけど、最終的にそれをするのが、好きな人を傷つけることで守られる立場である山田だというのが、山田自身にとって辛いことでないはずがないのだ。そしてもちろん、市川がそれをわかってないはずもなく……中学生の恋愛でこんな苦悩があってええんか?! いくら引き続きイチャイチャするからってよ!! 先走るけど6ページ目の下の2人の辛い表情は、ごめんなさいを言うこと、言われること以上に、互いにそれをさせてしまったことを想っての顔だと思ってますよ。

 

・カンカンが元凶というか、まあそこは否定できないんだけど、じゃあこの公衆の面前での告白失敗イベントがなかったら今後どうなっていったかって、いくら今から距離感に気を付けていったところで、少しずつ「あの2人付き合ってるよね?」的な噂が広がっていった可能性は全然あると思うんですよね。図書室での逢瀬や2人での登下校、買い食いなんかが目撃されてないはずがないので。そこを「みんなの前で告って振られてたよ」って事実があれば、あぁあれは仲がいいだけだったんだなとか、これ以降でそういう状況を見かけても、引き続きいい関係を続けられてるんだなとか、そういう「勘違い」に持っていけることを思えば、一概にバッドイベントだったと判断するのも違うかなと。カンカンも自分の楽しみのためとはいえ一応はまったく脈ナシの男女をくっつけようとしてるわけじゃないしね。失敗して驚いてたし。関係者以外が教室からいなくなってから扉を閉めて祝祭を始めたのも、まあ山田に対する気遣いがあったのかもしれない。結局ギャラリーは登場しちゃったし、失敗後、「気を取り直して」っつって誕生日会を行おうとしたところは目を疑ったけど。ごめんはないのか。

 

・久々に前置きが長くなりすぎてるけど、これだけ書かせて。足立からもいい出汁取れてるんですよみなさん。この「おい」にどんな感情が含まれてるのか、それはたぶん次回に明かされるんだけど、今から考えるだけで最高じゃないですか。足立はまだ2人が付き合ってることは知らないはずだけど、この一連のやり取りが狂言ってことはたぶん薄っすらわかってるんじゃないかと私は思ってる。そのうえで、なにに対しての憤りかってところが大事だ。あと、「そんなはずはないけど、ホントに市川が振られたんだとしたら、もしかしたらまだ俺にも」みたいな期待がほんの一さじあって、それで友達が振られたことに心のどこかで喜びを感じてしまってる自分に気づいてたりしたら、もう、もうね。

 

・ところで、ずっと交際の事実を公衆に知られないように頑張ってるわけだけど、なんでなんでしたっけ。別に恋愛禁止のアイドルというわけではなく、世間的に女優志望のモデルに対してそこまで純潔性が求められてる気もしない。豚野郎的ファンは流石に少数派でしょう。同い年の彼氏がいる事実が発覚したところで、山田の今後に影響するとは考えにくいのだ。そっちの方が楽しいから、で隠しているならともかく、傷ついてまで隠さなければならない理由にイマイチピンと来てないので、ふとした瞬間に「あれ、なんでだっけ・・・」ってなる。何巻か前、まだ付き合ってないときに「有名人を貶めたい人はたくさんいるから」って理由で距離感に気を付けようねって話はしてたなそういや。あれか?

 

・それじゃ、流石に前置きはここまでにして、頭っからいきましょうか。個人の感想です。

 

・教室に突如顕現した地獄。事情を知って、そこが地獄だと知ってるくせに楽しそうにしてる萌子はさては受験のストレスを晴らそうとしてるか? そして案の定市川が仕掛け人だと勘違いしてしまってる山田。僕ヤバにしては珍しい「ごめんって顔」みたいな注釈は、ここの山田が勘違いしてるってギャグをわかりやすくするためでしょうね。冗談は分かりやすいのが一番ですし。

 

・地獄の瞬間。ギャラリーも増えちゃってますね。前置きでも書いたけど、躱せることは分かったうえで「ならばいっそ」に持っていけるのすごいよね。「知らなかったけど」って一言と「俺」って一人称で違和感を持たせて『これは演技ですよ』と山田に伝えてるのも芸コマ。中学生の立ち回りじゃないよ。

 

・告白の瞬間の外野それぞれの表情ですよ。事情を知ってる萌子とにゃあが両方とも驚いているが、これはたぶん市川がなんとかして躱すと思ってたんでしょうね。ある種の信頼が感じられて大変良きだけど、止めてよ。どうしようもなかったのかもだけどさ。足立が驚いた様子もなく終始真剣な顔なのも良い。山田と市川の仲については、となりで驚いてる神崎君と同様にある程度深いところまで把握してるのに、こうも反応に差が出るってところが注目ポイントです。

 

・「伝わってくれ!!!」。うんうんうーうー考えてる山田かわいい。気持ちに従えばはい以外の回答はあり得ないけど、明らかに状況も市川の言動もおかしく、市川なら絶対になにかあるはずだと一生懸命考えてる図だ。

 

・つまるところ市川は、ここで自分を振れと言っていると。山田が市川のことをどれだけ好きか、計り知れないほど知っているのに、山田自身のためにそれをしろと言っているのだ市川は。酷い男ですねまったく。小さく首を振ってる山田が良い。ここで市川の意図に気づける山田もすごいというか、この辺はまだ取り決めたサインとかなしで意思疎通を行ってるのがすごい。2人はいつも以心伝心だ。懐かしくて涙出てきた。

 

・サイン活用その1。前回のフリから絶対使うとは思ってたけど、ちゃんとしっかり使ってて逆に笑ってしまった。決めといてホントよかったよ。ともかく、山田は市川がしたいことを理解したうえで逡巡していて、それはもちろん市川を案じての部分が大きいんだけど、山田だって市川が覚悟しての行動だとは分かってるはずなんですよね。そのうえで躊躇い、サインを見て決断した。次のページで山田も「好き」のサインを人知れずやっているけど、ここだって市川はさっきのごめんなさいが嘘だと分かり切っていて、だけどその山田のサインに心を動かされている。つまるところ、伝わる相手だからといって伝えることは放棄してはならず、伝えるための行動そのものはどこまでいっても大事なのだ。

 

・震えるようなごめんなさい。ちゃんと演技が上手い山田が、こんな程度の返答しか出来ないという事実に胸がはりさけそうになりますね。山田と市川はもっと苦しいはずでしょう。たまらん。

 

・地獄閉幕。まさかの祝祭失敗で動揺してるカンカンは置いといて、そのカンカンよりさきにすっくと立ってる小林が気になりますね。ずっと山田の方じゃなく市川の方を見てるし。しかもちょっと険しい顔で。ここも後々なんかありそう。というかさっさと小林にも伝えなさいよ(n回目)。萌子とにゃあは山田の辛そうな顔を見てなんとなく察しただろうか。申し訳なさそうだったにゃあはともかく、萌子はちょっとは反省してね。

 

・足立の「おい」については次回を待つとして、実際足立に対してもそろそろちゃんと言うのだろうか。チラ見せ次回予告だとなにかに納得してない様子だったが、はて。足立がここまで良いキャラになるとは思わなかったよ私。あとは、ホッとしている風の下級生ズ。なぜ安心する。憧れの先輩に彼氏が出来なかったことがそんなに嬉しいか。おまえらのようなものがいるから……!と謎に憤りそうになるが、八つ当たりですね。

 

・サイン活用その2とその3。「ばーか」はその、自分を悪く見せることに抵抗がなくなりすぎて逆にどうかと思うよ私。ほどほどにしときなね。自己犠牲の甘さは癖になるけどさ。

 

・もっかい書くけど「気を取り直し…」はさすがにどうかと思うよ。主役の山田がどっか行った瞬間はさすがにこれ焦ってるっぽいけど(カンカンを止めた萌子はナイス)、逆に市川に対しては感情ゼロですからね。やっぱヤバいよこの子。

 

・備品室に入るまでのスピード感すごいな。というか結構スタートに差がついてるはずなのに山田に追いつかれてるじゃねぇか。市川が遅いのか山田が迅すぎるのか。

 

・ユニゾンするごめん。こういうの大好きだ。たがいに仕方なしでも傷つけあって、けど「仕方なかった」では済ませずにちゃんとごめんと言い合う、そういうのがちゃんと大事にされている。

 

・山田の自己嫌悪。狂言をさせたのは市川だから、「今の自分の~」は違うよなと思ったけど、もしかしたら、市川の一人称や言動がおかしいから何か裏があるとかを考え付く前に、まず「こんなみんなが見てる前でバラされたら困る」って思ってしまったのかもしれないですね。じゃなきゃこんな絶望した顔にはならないでしょう。

 

・けどそう考えるってのは、自分の夢や将来を現実的にクレバーに考えられるという子供らしからぬ側面故で、市川は山田のそういう大人な面も好きなのだ。「だから山田が好きだ」だと言葉が少ないというか、欠点をそのまま愛してるみたいなニュアンスっぽいけど、それは欠点じゃないという意味だと思ってます。

 

・本当の誕生日プレゼント。化粧品とはまた難易度の高い……。山田は相変わらず恋愛絡みだと頭の回転が爆速だね。中学生が付き合って初めての誕生日プレゼントをもらって一秒で考え付くやつじゃないだろこれ。

 

・ひさびさにちょっと長くなってしまった。おまけはこの流れで教室に帰るという山田のバケモノ染みた精神力に恐れ慄くけど、まあ完全に立ち直ったってことなのでヨシでしょう。あのままだとカンカンが山田を怒らせてしまったと勘違いしっぱなしになりそうだったしね。……させとけばいいのでは? ともかく、次回は足立がひさびさにガッツリ登場するようで、楽しみですね。じゃ、そんな感じで。