せんくつにっき

思うこと、感想、とかとか

僕の心のヤバイやつ感想『僕はおままごと』

・サブタイ見た時点でもう「しんど……」だよ。読めば案の定市川の葛藤があまりにもしんどいし、一方で葛藤が起きているってことは内面も成長している(してなければそのまま家まで逃げていただろうし、濁川くんだって咎めに出なかったでしょう)ってことでもあり、二人のこれからのためには必要なイベントなんだよなぁとは思うし、それはそれとしてしんどい気持ちは消えないし……です。

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・そんで市川の考えている通り、もしも山田が普通の中学生に戻ったら、二人が普通の中学生同士に戻ったら、そんな葛藤もなくなるわけで。市川自身がすぐに否定している「もしも」だけど、それはそれで考えられる一つの未来の形ではあったわけだ。メタ的には、今回の話でその未来に進むことは半ば否定されたけども。ある意味ここってあれですよね、市川が「山田が普通の中学生だったら(こんな辛さなんて感じてしまわずに)付き合えるのに」って思ってるってことですよね。

 

・時には登校を共にし、お昼休みは図書室で、放課後は一緒に下校し、たまに映画を見に行って、休日も遊んだりご飯を食べに行ったりする。さんざっぱら「もう付き合ってるじゃん」と感想で言ってきたけども、それが跳ね返ってきた感じですね。普通の中学生同士なら確かにそうだけど、二人は山田と市川だからそうなってないし、山田と市川だから互いにこんなに好きあっているんだと。

 

・「嬉しかったんだよ?」のとこの山田、これ目が潤んでるよな? ここの山田の心情も考え出すと辛くなる。山田が自分で言っている通り、仕事と自分を肯定してもらったことは本当に嬉しくて、だから市川に仕事のことも知ってほしくて、だけどその結果、市川は明らかに不機嫌になってしまっていて。突き放すような態度から、いつかの市川が図書室に来なくなったときのことも思い出していただろう。あの時も今も、山田には市川がどうして嫌な気分になっているかはわからないけど、今回はたぶん自分のお仕事が原因なんだろうなと察することはできる。

 

・自分の好きなものを、好きな人にも好きになってもらいたいという願いは、(少なくともこの瞬間では)ダメになった……どころか、市川は仕事のことが嫌いのようにすら見えている。山田はどちらも「好き」だからこそ、どちらかを選び、どちらかを諦めなくてはならなくなった。俗な言い方をすると、「仕事と市川、どっちが大事なの?」だ。最終的には市川が「仕事をしている山田」を受け入れる(ようにする)と行動で示したから良かったものの、(おそらく仕事の)連絡を絶ったことといい、市川の手に黙って引かれたことといい、衝動的には市川を取る気持ちがあったんでしょうね。

 

・それにしても……異質! 初登場の男キャラの──たぶんマネージャーの諏訪さんなんだろうけど──キャラデザが異質! うえきの法則のボスキャラの初登場時みたいな雰囲気してる! 要するにロベルトだけど! なんだろうな、こう、怒った時の山田もこんな感じの眼とかオーラをしていて、無意識のうちにラーニングしてんのかな。一番怖い人ってことで。

 

・久々に前置きが長くなった気がするが、そろそろ頭っからいきましょう。個人の感想です。

 

・寝起きおねぇだ! 髪がモサモサしてる! いやぁ、心のどこかが満たされますね。寝起きの市川姉弟からは謎の栄養素が摂取できる。起こされたのは市川のファッションチェックのためで、市川こいつ何時に起きたんだ。

 

・朝早いのは通行人を考慮してのことなんでしょうね。恵比寿駅。たぶんこれも特定班が動くんだろうな。撮影場所と、市川が逃げ込んだ場所。

 

・お仕事山田と秒で圧倒される市川。雑誌やバラエティで「仕事をしている山田」を何度か見て、たぶんそのたびに打ちのめされてる市川だけど、生だとまた違うようで。そりゃね、見えてる人の数が、大人の数が違うからね。何人もの大人の裏方がいて、その人たちと同列で山田も仕事をしている。自分がああいう大人になるのはまだまだ先だけど、山田はもうそこにいる。

 

・市川を見つけて笑顔になる山田。山田自身はわりと「素」のままなんだよな。素というか、仕事してるからって別人格になるわけではないっつうか。

 

・目が怖い謎のキャラ登場。上でも書いたけど、マネージャーの諏訪さんだろうか。そもそも「諏訪さん」がマネージャーなのかどうかも確定事項ではなかった気がするけども。

 

・コンビニで買えるワンコイン以下の犬のケーキ(もしかして「わんこ」と「ワンコイン」かけてたりする?)と、よくわからんが有名洋菓子店であろうところのおそらくはメタクソ高いマカロン。曖昧にイメージしていた「差し入れ」とリアルの差にとどめを刺されて思わず離れる(というか逃げ出す)市川だけど、うーん辛い。崩れたケーキがなお辛い。大人のような見た目をして大人と共に仕事をしている山田と釣り合うには、自分も大人のようでいなければならないという想いと、どうしたって大人ではない、普通の中学生でしかない自分自身とのギャップ。「おままごと」って形容が辛い。そんな急に大人にならなくたっていいのに。

 

・自棄モードの市川。ショックで過剰にこれまでのことや自分の決意、想いを軽んじる市川だけど、成長した内面が崩れるわけではなく、それは濁川くんというかたちを持って市川を留めさせる。山田が見つけられる範囲で立ち止まってたのは濁川くんの(=これまでの市川の成長の)おかげだと私は思ってますよ。

 

・山田推参。「どっか行くの見えて……」の市川、思ったより勢いよく逃げてるな。「なんでもない」ときに繰り出すダッシュではない。それにしたって撮影抜け出すのはほんと山田は市川のことが好きだなぁって感じだが、濁川くんが消えた市川はこのまま帰ってしまうであろうと思っているので、ナイス若気の迸りって感じです。

 

・突き放すような物言いをしてしまう市川。完全に自棄、完全に八つ当たりで、こんな返答する自分を内心で刺してそうだ。

 

・いろんな習い事を辞めてきたけど、モデルという仕事は上手くいっている……というわけでもなく、山田自身はモデルも上手くはいっていないという認識だったと。「私なんか」という言は、少なくとも自分の容姿には自信を持ってそうだった山田らしくはないように感じるけども、自分が可愛いという自認とそれでも上がいるという認識は矛盾しないもので、なんだったらその「容姿に自信がある」ように見える態度も、それを否定しない周囲の反応を求めてのものかもしれないですね。

 

・仕事が好きという自分に、仕事を楽しいと思う自分に気づかせてくれたのは市川なのに、その市川がそれを否定するようなことを言う。ホントここの涙目での「嬉しかったんだよ?」が心にクるな。普通ならすれ違い続けた末の別離の言葉だよこんなもの。許さんぞそんなの! 

 

・「もし山田が普通の中学生に戻ったら」。ああしんどい。だって最初っから「そう」だったのなら、たぶんそれはそれで二人は幸せになれたのだろうし、市川の感じる辛さはなかったと思うのだけど、すでに市川は山田の仕事に対する想いを知っているわけで。よしんば山田が市川のために仕事を辞めたとして、それによって得られる幸せを市川が素直に享受するとは思えないでしょう。山田が仕事を頑張って頑張って、それでもダメだったと諦めた末に市川と共にいる未来ならばともかく、自分のせいで山田が「好き」を諦めたとき、市川がそこになんの辛さも感じないとは、少なくとも私には到底思えない。

 

・手を引く市川と、黙ってついていく山田。ヒールの山田がこけなくてよかった……じゃなくて。山田がここで言葉を飲み込んだのは、冒頭で書いた通り、仕事と市川だと市川をとろうという気持ちがあったからなんですかね。

 

・だけどそこは市川。山田を仕事に連れ戻し、『そうだったらこんなに好きになってない』。市川が山田に対する「好き」に気づいたのは、山田が仕事に穴を開けて涙を流したときで、つまりは既にその時から「仕事をしている、少し大人な山田」を好きなのだ。

 

・市川が山田の手を引いて走り出したとき、山田は「市川が仕事から自分を連れ出そうとしてる」と認識し、それでも黙ってついていくことを選び、一方で市川は仕事場に戻り、「もっと知りたい」という決意を貫くことを選んだ……というのが市川のモノローグまで把握できる読者たる私の読み方なのだけど、山田目線に立ったとき、この「仕事場に戻る」という市川の選択ってどう取れるんでしょうね。考えようによっては「山田を仕事に戻し、自分は去る」つもりのようにも取れるのではないでしょうか。そう考えると、この頑なに手を離そうとしない山田の堂々たる立ち姿の動機が見えるような気もする。

 

・で、やたら怖い諏訪さん(推定)で引きと。こういうキャラが実は普通に優しいというのが鉄板だけども、さてどうなんでしょう。なんなんだよこのオーラはよ。ハイライトもないし。

 

・とりあえずここまで。