せんくつにっき

思うこと、感想、とかとか

僕の心のヤバイやつ感想『僕は探られた』

トニカクカワイイ山田を描きたいという欲が存分に感じられて良かった。ところでずっと気になってたんですけど、頭のナルトみたいなの、なに?

mangacross.jp・なにか感じて詮索を止める山田とか、見られてやばいと思ったけどたいしたことなくって安堵する市川とか、このあたりの優しい描写が僕ヤバを好きな理由のひとつです。

 

・頭っからいきましょう。個人の感想、考察です。

 

・山田による開幕家事の出来る嫁気取り。おねえちゃん呼びを勝ち取った途端市川家の一員みたいな顔しやがって……は流石に山田を卑しく見積もりすぎで、たぶん純粋にいい子だから自分の食べた分は自分で洗ってるだけだろうだけど、好きな子とその家族によく見られたいって下心『も』あったほうが可愛げがあっていいじゃないですか。だから私はそう見ます。

 

・何食わぬ顔して部屋までついてくる山田。P1左下の山田の顔がなんかウケるな。ほのぼのした姉弟事情を聞けて嬉しい(一般にある程度親しい人相手にしか自分の家族の話なんてしないため)って気持ちか、今度は堂々と市川の部屋に入れて嬉しいって気持ちか。後者はあるだろうな。たぶん。前回(風邪回)の時は市川の意識がない中で部屋をじっくり見るのも憚られたろうし、ある意味今回はリベンジだ。

 

・『一度触った場所は次も触っていい』ので、特に断り無く部屋に入るし、異性のベッドだろうが普通に座る。どっちも一度経験済みのため。山田のこの価値観、行動原理の解釈にほんと便利だな。みなさん作者のアカウントは是非フォローしましょう。こんなとこまで感想見に来る人がフォローしてないはずはないと思うけど。

 

・市川の本棚にある『文字禍』と『悪癖の科学』、『リゼロ』。浅学の私はどれも読んでないけども、並んで置いているわりにジャンルがバラッバラだな。リゼロはともかく、他の2つはこれら、ワンチャン僕ヤバの副読本として示された可能性あります? ……円城塔が?

 

・アルバム見たことあったんかい。半分しか写ってない市川まで見つけてたって、どんだけ小林のとこでどれだけじっくり見たんだあなた。ウォーリーを探せじゃないんだから。というか山田と小林、中学校別だったんだ。一番仲が良さげだし、小学校からの付き合いだと勝手に思ってた。

 

・「べ……別に市川を見ようとしたわけじゃ……」……あ、あざとすぎて誘い受けにしか見えない……! わざと隙のあるムーブを見せて「もしかして山田は僕のことが……?」と思わせようとしてるとしか……! 一刻もはやく市川から告白を引き出そうとしてるようにしか……!! いやいや落ち着け、二学期終了直前のあの事件、市川が一時的に離れ、山田が泣くほどのダメージを受けてからまだ2週間程度しか経過してないはずだ。いくら仲直りできたとはいえ、あれからさほど間もないのにそんな「市川は私のことが好き」を前提に行動できるか? いやけど、市川の「友達 とりあえず 今は」の件もあるしな……。市川からの告白待ちのつもりでもおかしくはないのか……。

 

・まあ、天然だろうが計算だろうが、好きな子が部屋に来ていっぱいいっぱいな市川には認識すらされてないんですけどね。こういうの、ラブコメでよくある(そして批判されがちな)「好きです!」「え? なんだって?」の系譜だけど、さほど気にならないのは私が僕ヤバに入れ込んでるからだろうか、それとも大して重要な局面じゃないからか。

 

・ゴミ箱を空にしといてよかったね。どんなに作品人気が出ようと、市川の自慰描写をやめるつもりがない作者。信頼できる(ホントか?)。流石に一巻ほどの頻度ではなくなったけど。……『よく部屋に入る姉』『アルバムを取る際も入ったはず』『昨日はどうやらシてたらしい』と並べると、気を回して処理してくれたおねえという最悪の行間が見えてきてしまうが、見ないふりをしときましょう。朝自分で処理したんだ、たぶんそうだ。

 

・隣に座れと言外の強要。山田は強い。このくらいの距離感であれば図書室と変わらないはずだが、二人きりの部屋でベットのうえだもの、市川もひるむよ。このあたり、山田はどのくらいの他意があるんだろう。

 

・山田による探りその①、過去の友人関係。市川とともによく写っている木下くんと高野くんは、はて再登場はありえるだろうか。気になるのが、小林にアルバムを見せて貰ったとき、市川についてはどれくらい探りを入れたのだろう。自分の恋について、小林には内緒にしてるだろうからさほど聞けなかったか。

 

・2人とも私立に行ってしまったと、たぶん同じ学校なんだろう。市川も受験したが落ちてしまったとか、そういう嫌な過去はいろいろ想像ができて、山田も同じようなことを思ったのか、何かを感じて詮索をやめた。それが市川にとって本当に地雷かどうかは現状わからないけど、わからないからこそ山田はそこで一旦止まることができる子なのだ。鈍くて無遠慮などでは決してない。

 

・この件が市川の地雷のひとつかどうかは、市川のリアクションからは読みにくい。「2人とも私立に行ったから」の横顔もなぁ、なにか含んでいるようには見えるが、今は親交がないことに対して思うことがあるのは当然だろう。正直『山田に知られたくない』ようなのものには見えない。

 

・山田による探りその②、部屋のトロフィーや賞状について。金賞だの文部科学大臣賞だの、規模はしらないが聞いた感じけっこうな表彰を貰ってる。それも絵、作文、自由研究とそれなりに多岐にわたってるし、わりとすごくない? これであの自信の無さってのはなかなか筋金入りだ。まあ、自信がないのは対人関係(恋愛関係)に対しての部分が多く、いくら勉強ができようが文化系の賞状を貰おうがその方面への自信には繋がらないけど、しかしその『意味の無さ』を自覚してるというのは中学生にしては客観が出来ている。ネガティブってそういうものか。

 

・グロ系の本、市川はわりと教室でも図書室でも堂々と読んでるのに、なにを今更うろたえてるのか……とは思うけど、まあ当人のなかではなんらかの線引きがあるんでしょう。学校でも読めるやつ、読んでるとこを見られてもいいやつと、自室でしかダメなやつの線引きが。心理的な地雷ってそんなもんで、こういう本はどうやら山田にとってはさほどのものではなく、だから見ないふりはしなかったし、今回のように動機次第では「すごい!」となるものだけど、市川はそう思ってなかった。反対に、山田にとって私立に行った友人と行かなかった市川のアレコレは現状触れない方がいいと判断し、「なんでもない」と誤魔化した。

 

・なにがとは言わない。なにがとは言わないが、「すご」のコマ、すごくないですか。その、存在感というか、しわとかグラデーションに対するこだわりというか、端的にデカさというか。拒絶されると恐れていたのが受け入れられたという、かなりいいシーンでいい瞬間のはずなのに、つい気になってしまう。

 

・「心理学ってやつだよ!」の持ち上げ方が、いかにもよく知らない人のそれで微笑ましいね。そして何の気なしに寝っ転がるな。市川が今夜はかどってしまうだろうが。

 

・人のベッドに寝っ転がりながら「私の心の中はわかるかな?」~「ね~~当ててみてよ」、いやもう彼女じゃん。よく考えたらクリスマスデートのときからそうだけど、すっかり彼女気取りじゃん。

 

・聞いちゃまずいかなと引いたり、見られたらまずいなと焦ったり、自室と過去には地雷がそこかしこに埋まっていて、それは見えてたり見えてなかったりする。だから軽々には踏み込めない。人の心なんて基本的にわかんないし、普通わかってほしくもないですからね。だからこそわかってほしいと思えること、思ってもらえることが尊いし、理解し合えたときには喜びが発生するのです。

 

・CIEL見つかりかけてから覆い被さるまでの疾走感よ。市川の咄嗟の行動、間違いなく後悔しただろうが読者としてはナイスとしか言いようがない。よくやってくれた。足でも挟んでるのは左足で体を支えて山田の体に触れないようにという判断だろうが、結果的には誰がどう見ても押し倒した格好に。最&高。正面からの顔の近さ、なにげに記録更新じゃない?

 

・P8の下の三コマ。少なくとも右二つは互いの視界だろう。個人的に注目すべきは真ん中のコマ、市川を見てる山田で、視界の中心は顔というよりは喉、つまり喉仏になっている。男子特有の出っ張った喉仏をある意味『発見した』描写じゃなかろうか。もちろん恋愛感情がある以上、今までも男子として見てなかったなんてわけもないが、しかし『性』として今回強く意識したのはたぶん間違いない。

 

・見れば見るほど山田のリアクション最高だな。いっぱいいっぱいでなんにも言えずぐいぐい体押すとこまで。カタチとして覆い被さってしまっただけで、市川にそういう目的があったわけではない。山田もそれはわかっていて、だから「ごめん」だ。ことの発端は山田だし。

 

・CIELだけど、結局山田にはバレたんだろうか。目線とかは明らかに表紙を捉えてる。気づいてたとしたら、直後のドタバタで瞬間的には頭から飛んでいるだろうが、あとから思い返したときに「あれやっぱりそうだよね……」になってそうで非常に健康にいい。

 

・市川の動きが迅速なおかげで、それがCIELだとは気づかれてはなかったとしても。なんとなく女性が表紙になってるくらいは分かってそうで、となるとアレな雑誌だったと勘違いもあり得るが、これは妄想の域です。

 

・ニア押し倒しにはいっぱいいっぱいになるけど、それはそれとして卒アルをパシャパシャする山田。強すぎる。尋常じゃない切り替えの速度にほれぼれするね。おい階段は走るな。怪我するぞ。

 

・次は私の番宣言。……アルバムのことだけですよね? 押し倒すほうは含まれてないですよね? 「私が」っつってるけど、言い回しを変えただけで言いたいことはアルバムを見せるってことで変わんないですよね? そしてどさくさで写真撮ったことをうやむやにしたなこの女。

 

・たぶんそのうち、そしてそう遠くない未来に山田の家に行くんでしょう。なんなら次回山田の部屋からスタートでも……いやそれは流石に速すぎるか。

 

・とりあえずここまで。

 

・扉絵きたしチラッと追記。

 ・扉絵は衝撃の床ドンシーン。改めて山田、ピアスにネックレスにブローチに秋田犬たろうに、もうバッチバチにキメ照るのもほどがある。そんなんで待ち合わせ場所に現れといてお前、心を読まれたら困るだぁ〜〜?? ほんとに困るんだろうなぁ〜〜?? それともあれか? 困らないのが困るってことかぁおい? なにを言ってるんでしょうね私は。

 

・冗談はさておき、なに考えてて、なにを読まれたら困るんでしょう山田は。僕ヤバ全編において常に横たわってるこの問題、今回も今回で反射的には、うん、卑しい山田というか、このまま流れで……みたいな成年漫画的サムシングじゃねーのとは思ってしまうけど。作者が作者なのであながち間違いじゃない気もするし、ちょっと分かりやすい面白さに傾倒し過ぎという気もする。

 

・じゃあ一旦その話は終わらせといて、山田は市川に自分の好意を気づいてほしいのかどうか、という問題を。市川はある程度分かりやすくて、おそらく『バレるのが怖い』だ。ここ最近は山田との関係性をだんだんと認めはじることでその恐怖は薄れているとは思うし、同時に『伝える』ということを前向きに考えだしている。いい傾向だ。どの立場で言ってんのかワカンねぇなこいつ。

 

・で、山田。完全な主観を端的に言えば、『バレるのは困るが、伝わるのは困らない』ように見える。現状、本編の山田は好意を伝えるそぶりは今のところないが、ことあるごとに近づいてお話したり、外で会う時はできる限りのオシャレをしたり、単に恋愛に不慣れだから…というのもあるかもしれないが、そういう風に山田は周囲から「めちゃくちゃ分かりやすい」「脈しかない」と思われるレベルで好意が漏れていて、その端となる行動は市川の前でもほとんど変わらない。市川がたまさか鈍感でかつ目を逸らしているから気づいてないだけだ。

 

・これは二択で、「自分の行動が市川にどう思われかねないかわかってない」か、「わかっていて、しかしそう思われても構わない」か、だ。そして、今回を含め、今までの話からもわかるように山田はいうほど子供ではなく、芸能活動もあるからかむしろ普通の中学二年生より察しがよく、相手を思って好奇心を抑えるくらいの気遣いも当然にできる。そんな山田が、自分の行動が相手に、市川にどう取られるかをわかってないなんてことはないと私は思っている。もちろん、恋は盲目なんて言葉はあるが。

 

・一方で、今回の床ドンしかり、不意に市川から来られたときはすぐに逃げたり赤くなった顔を隠したりする。普通に考えればこれは好意に気づかれないための行動で、「そう思われても構わない」ようには見えない。だがしかし、『隠す』ということは、『どう思われているかわかっている』ということで、だからこその『バレるのは困るが伝わるのは困らない』だ。好意による随意の行動であれば伝わるのはいいが、不随意の行動でバレるのはよくない。

 

・だからまあ、市川に出題した『心の中』は、異性のベッドに無造作に寝っ転がったりまでの『その日の山田の行動』から伝わる、信頼感から恋愛感情まである好意のグラデーションのどの部分が伝わっていても山田的には正解で、床ドンによって高なった心の内は不随意であり、バレる形になるので困ると、そんな感じでどうでしょう。

 

・どっちにしろ、本編時点の山田は堂々と好意を伝えることはしていないし、しそうにもあまりない。市川からの告白待ちだろうと思われているが、ここで私の好きなバレンタインまわりのツイヤバ(おそらく二年時で、本編より先なのは確定)がポップしてくる。『告白待ち』はまあ、ある意味ナメた……は言い過ぎにしろ、随分と余裕のある態度だが、しかしこのバレンタインツイヤバでは周りくど過ぎて逆に本命っぽくチョコを渡してみたり、市川の思う本命っぽいチョコの渡し方を聞いた瞬間にそれを実践しようとしたりと、随分とその余裕が消えてるように見える。先生がどれほどツイヤバと本編で好感度の推移だったりの辻褄を合わせるつもりかは知らないが、本編があと1ヶ月ほど経てば山田もそういう状況になるかと思うと胸が躍って仕方がない。

 ・次回は市川の壮絶な過去編とのことで、13回前のアレを思い出して躍っていた胸が苦しくなるけども、楽しみに待ちましょう。卒業式、どれほどの過去なのか。それでは。